
CNC自動旋盤の真価は、同じ部品を大量に量産するときに発揮されます。
しかし、長時間・連続して加工し続ける「大量ロット加工」には、短時間の加工では起きない特有の問題があります。
このページでは、大量ロット加工で起こりやすい問題と、その回避法を解説します。
この記事の内容
大量ロット加工で起こりやすい問題
① 寸法の経時変化(ドリフト)
連続加工していると、最初は良かった寸法が、時間とともに少しずつ変化していくことがあります。
主な原因は、工具の摩耗と機械の熱変位です。
工具は加工を続けるうちに摩耗し、削れる量が変わっていきます。
また、機械は運転を続けると発熱し、各部がわずかに膨張・変形して、加工位置がずれます。
これらが積み重なると、ロットの最初と最後で寸法が変わってしまいます。
② 工具寿命の問題
大量ロットでは、加工の途中で工具が寿命を迎えます。
摩耗が進んだ工具で加工を続けると、寸法不良や面粗さ不良、最悪の場合は工具欠損による不良品の大量発生につながります。
③ 切りくず・クーラントの問題
長時間運転では、切りくずが蓄積して詰まったり、クーラントが劣化・減少したりして、連続稼働を止めたり品質を乱したりする原因になります。
切りくずについてはチップコンベアやフィルターの定期清掃に加え、切りくずの分断や高圧クーラントによる排出で蓄積・詰まりを防ぎ、クーラントについては期間を取り決めて総入れ替えするか新品を一定頻度で補充して性能を維持し、水溶性クーラントを使用する場合は劣化を防ぐために日々の濃度管理を行うとともに、液量・油温の点検も併せて実施することで、より安定した連続運転につながります。
回避法・対策
寸法変化への対策
工具摩耗による寸法変化に対しては、工具の摩耗量に合わせて自動補正機能を使用するのが一般的な対処方法です。
機械の熱変位については、熱変位補正や寸法アシスト機能を活用し、あわせて本加工前に十分な暖機運転を行うことで寸法を安定させられます。
さらに、より安定した寸法管理が必要な場合は、機内計測や機外自動測定による測定値を機械にフィードバックし、自動補正をかける方法も有効です。
加工しながら寸法を測ってずれを自動補正することで、ロットを通じた寸法の安定が図れます。
なお、機内計測および機外自動測定については、メーカーによってオプションの扱いとなるケースが多いため、導入にあたっては仕様の確認が必要です。
工具寿命への対策
工具の摩耗を見越して、寿命に達する前に計画的に交換する「工具寿命管理」が重要です。
何個加工したら交換するかをあらかじめ決めておけば、摩耗による不良を防げます。
切りくず・クーラントへの対策
揺動切削や高圧クーラントで切りくずを確実に処理し、クーラントの量・状態を定期的に確認することで、長時間の連続稼働を安定させられます。
「暖機運転」の大切さ
大量ロット加工で見落とされがちなのが、加工を始める前の「暖機運転(ウォームアップ)」です。
機械は、運転を始めると各部が発熱し、温度が安定するまでの間、わずかに寸法がドリフトします。
冷えた状態の機械でいきなり本加工を始めると、最初のうちは寸法が安定せず、機械が温まるにつれて寸法が変化していきます。
これを避けるには、本加工の前に一定時間、機械を空運転させて温度を安定させてから加工に入ることが有効です。
とくに精度の厳しい部品や、長時間の大量ロットでは、この一手間が品質の安定に大きく効きます。
「朝一番の1個目から良品を作る」ためには、機械のコンディションを整えてから加工に入る習慣が大切です。
よくある質問(FAQ)
Q. ロットの最初と最後で寸法が変わってしまいます。
A. 工具摩耗と機械の熱変位が主な原因です。
工具摩耗には自動補正機能、熱変位には熱変位補正や寸法アシスト機能の活用と十分な暖機運転が有効です。
より安定した寸法管理が必要な場合は、機内計測や機外自動測定による自動補正も選択肢になります。
Q. 工具はいつ交換すればよいですか?
A. 摩耗で加工不良が出る前に、計画的に交換するのが基本です。
「何個加工したら交換」という工具寿命管理を決めておくと不良を未然に防げます。
工具寿命管理機能で各ツールの寿命個数を設定し、達したら機械を停止させる、または寿命前に余裕をもって交換するのが一般的です。
加工音・切り屑・仕上げ面の変化も判断の目安になります。
Q. 長時間の無人運転を安定させるコツは?
A. 切りくず処理(揺動切削・高圧クーラント)、クーラントの状態管理、工具寿命管理を組み合わせることで、安定した連続稼働が実現できます。
まとめ
大量ロット加工では、寸法の経時変化・工具寿命・切りくずやクーラントの問題が起こりやすくなります。
機内計測による寸法補正、計画的な工具寿命管理、確実な切りくず処理を組み合わせることで、長時間でも品質を保った量産が可能になります。
具体的な手法は「連続稼働時は「機内計測」で加工不良を防ぐ」もあわせてご覧ください。
